天井にいたのね

 *あかねのイタリ珍プレー*



球目天井にいたのね


夏休み、突然思い立ったバカンスでパリに行った他に、

「小バカンス」という感覚でヴェネツィアへも行った。

ヴェネツィアはこれで既に4回目、けれど意外にもここだけは一人旅は初めて!

そしてパリと同じように某航空会社のお友達にとってもらったホテルは、

3つ星なのに6000円程度!

ほんと言うと、その某虚空会社のお友達に「5000円程度の安いホテルを探してほしい」と

言った時「(安全のため)止めときなさい」なんて肩をポンと叩かれて言われていた。

だけどパリとヴェネツィア・・2箇所も行こうと決めた手前、そんなに贅沢はできない。

それに!ヴェネツィアはイタリア隋一で治安の良い街、それは私自身も実感していた。

だから全然、何も、心配はしていなかった。


場所はサンタ・ルチア駅のすぐ近くだった。

さすがにヴェネツィア4回目の私、一番大きな通りということもあり容易に見つけられた。

ロビーもそこそこ広くて綺麗、外観もなかなか綺麗じゃないの!

これは予想以上にいいじゃないのと思い中に入り、フロントに『部屋を2泊予約しています』

と告げ部屋へ。

部屋は4階(日本でいう3階)で、一人で泊まるには十分な広さ。

「うわ〜カワイイ」思わずそう、言葉を発してしまった。

ひとり旅のウキウキ感と、イタリアで働いたお金でここに来れたという嬉しさもあって

俄然気持ちが盛り上がってきた!

外出用のちっさいカバンに財布などを詰め直すと私はすぐ、ホテルを出た。

外は眩しい程の青空、これは絶好の写真日和!

私はその日、着いてから夜遅くまで出ずっぱりで歩き回っていた。


お腹もいっぱいになって、足もパンパンになってホテルの部屋へ向かった。

とにかく早くお風呂に入りたい!

幸いその部屋はバスタブがあったので、こりゃあリラックスバスタイムが過ごせるぜぃ

と楽しみにしていたのだ。

と、いうことで・・・鍵を開け真っ暗な部屋の電気をつけた後、

バスルームの電気もつけようとスイッチのあたりにふれた時、なにかがいるような気がした・・・。

悪寒と共に、ものすごい近くにカサっという感じのするモノがいる。

部屋の電気はついてるものの、そのスイッチ周辺はまさにバスルームの明かりをつけないとまるっきり見えない・・デッドゾーンだった。

嫌な予感がしながらもそのスイッチを押すとそこには!!!

いや〜〜!!やっぱり!!!

そこにいたのは全長5cmほどのクモ!

またこいつなのか・・・!思えば1ヶ月ほど前、うちのバスルームの天井の角っこにも

きゃつめ はいた。

だいぶ長い間ほっといたのだけれど、バスルームに入るたびゾッとするので、

ある日意を決して掃除機で吸い取ってやったのだ。

それなのに・・・また私の目の前に出現するとは、どういうこと!?

しかも私この部屋で寝るのよー!!

見るときゃつは壁にいる、巣をつくっていないのでこれからカサカサ動き回るに決まってる!

そ、そんなの耐えられない!

だけど、つぶしたりなんて芸当私には出来ない・・・。

それなら・・・そうだ!水をかけちゃえ!

もうそれしかないと思い立った私、硬直した体でバスルームのコップに水を入れておそるおそるバシャァっとかけた。

しかし結果は床におちただけ・・・当たり前だよ、それくらいで死ぬわけない!

さらに恐怖なことに、部屋の床はフローリングじゃなくマットで、しかもバスルームの入り口にはさらにバスマットらしきものがひかれていた!

そしてさらに!そのバスマットの色たるや、黒なんだか茶色なんだか謎の色。

あの小さい黒に長い足がどわっとついているきゃつが、同化するにはうってつけ!

あわわわわわ・・・・・。

こうなってはもーうどうしようもできない、これ以上探す事は私には出来ない。

とりあえず私はお風呂の用意をして、楽しみにしていたリラックスバスタイム??だ。

なんて・・・もちろんそうはいかない、入ってる間もきゃつはいないかと気を配りながら。

まるで落ち着いたバスタイムは過ごせず、ベッドへ。

ベッドに入るときさえも布団にきゃつはいないかと恐くてしょうがない。


ああ・・・治安は良いけど、ヴェネツィアのホテルは古いのが当然。

クモやゴキブリの1匹2匹、出て当然か・・・?。(いや、ゴキブリは見た事ないけど)

でも他のホテルではこういう経験はない。

私の場合 ここヴェネツィアでは1つ星・4つ星・5つ星L、そして今回の3つ星。

といったあらゆるランクのホテルに泊まった事がある。

虫は出た事はない・・・まあ1つ星のホテルは冬に行ったからね。

そう、この夏の真っ盛りの経験はない。

某航空会社の彼は、確かに安全を心配してくれて「止めときなさい」と言ったのだろう。

が、しかし!私は学んだ。虫対策のためにも3つ星以上で、安くても8000円程度のホテルを選ぶ方が良い。

このホテルに限ったことではないが、やはり海風にさらされてサビている箇所もある。

建て付けは良いけれど、壁と床の間に隙間があったりする。

ヴェネツィアだもん、それくらいは仕方ないと思っていた私が甘かった・・・。

こうしてたかだかクモ1匹に、様々なことを反省しながら私は眠りについた。


翌朝。

目が覚めた瞬間にパッと飛び起き、自分の布団の上を見た。

良かった・・・きゃつはいない。

それにしてもスゴク寝相の悪い私が、掛け布団を全然蹴っ飛ばしていない。

よほど、硬直した状態で寝てたのだろう・・・。

「はあ〜」とため息をついてもう一度枕に頭をのせる。

ずいぶん悩まされたけれど、もうきゃつはいないかもな・・・。

そう思った矢先・・・、私の目はきゃつを見つけ 思わずこうつぶやいた。

「天井に、いたのね・・・・」