*あかねのイタリア珍プレー*

*あかねのイタリ珍プレー*



球目日本を思い出す日


日本からは直行便でも飛行機で12時間はかかってしまうイタリア。

文化も全く違い、言葉も通じない。

暮らしていれば当然、日本が恋しくなって然るべきだ。

だが

あたしの場合、

バカがつくほどイタリアが合っていたのか

正直そういった、いわゆるホームシックにかかった事がない。

しいて言えば、ラーメンシックにかかったくらいか・・・。

しかし当時働いていたレストランで、「ラーメンが食べたぁ〜い」とわめいていたあたしの為に

そのお店の副責任者のような中国人が、まかないにラーメンを作ってくれて解消。

更に、パリに旅行に行った時、

イタリアにはないがパリにはラーメン屋さんというものがあり

夏だというのにビールにラーメンを食べ!

これまた、解消。

というわけで

日本に帰らないと治らないというようなホームシックには

かかった事がない。


そんなあたしにも、思い出したくなくても日本を思い出してしまう2日間があった。

それはイタリアの夏休み時期の終わり。9月の始め。

その日は夜中からずーっと雨が降っていた。

毎日太陽が出て晴れてばっかりいたミラノでは、雨の日は珍しい。

その上、連日続いた40度前後のあの暑さが嘘のように、その日は肌寒かった。

そんな中お仕事に向かう為5時頃家を出、

いつものようにバスで中心街まで向かって、いつも出勤時に聞いているaikoCDを聴きながら

同じ景色を見て普段と変わらない出勤風景。

それなのにふっと、(何だか日本みたいだなぁ・・・)

本島にその時は、何故だかわからないけれどイキナリそう思った。


いつものこの時間なら「さあー!お仕事にいくそー!」と意気込んでいる時。

それなのに、毎日見ているはずの外の景色を見ていると

まるで今日一日が終わってしまったかのような、奇妙な感覚に襲われた。

ただ空が暗いから?

何だか、それだけの理由じゃないみたいな・・。


流れていく景色を見ているうちにだんだんとわかってきた、日本ってこんな感じなんだ。


乾燥していて、晴れた日の多いイタリア。

じめじめして、雨の日が多い日本。

地方によって差はあるものの、夏頃の天気は印象的にこういう違いがあると思った。

さらに思った。

人の気分に、天気は大きく作用するんじゃないだろうか。

だって天気と比例して、日本人とイタリア人には違いがある。


そんな事を思った次の日、一緒に暮らしていた彼女が1ヶ月ぶりに日本から帰ってきた。

嬉しい日だ。

その日も前の日と同じように雨が降り続いて止まなかったが、

洗濯もして(好きでほとんど毎日やっていたが・・)、気分はうきうきしながら

彼女の帰りを待っていた。

そして・・


「ただいま〜」といつもの声。

彼女が帰ってきた。


再会を喜び、あたしと彼女はキッチンで一緒にお茶を飲んだ。

あたしはお仕事の関係で、夕方に家を出なくてはならなかったが

ぎりぎりの時間まで色々と話をしていた。

すると彼女が、ふっとこんな風な事を言った。

何か今日って日本みたいじゃない?イタリアに戻って来た感じがしない。


あたしが昨日感じた事とまるっきり同じ事を彼女が言ってきた。

「ね!あたしもそう感じてたの、何でだと思う?」

と言い、2人でその理由を考え話してみた。

あたしたちは同意見でやっぱり、雨が降っていて空が暗い、気分がだれてくる。

そんな理由なのかなあ?と。

お互いそういう、日本っぽいという感覚に襲われるというだけでなぜだかはあまりよくわからなかったが・・・。


そして当然その日もお仕事へ行ったわけだが。

いつもはローカルのラジオがかかっている準備中の店内のステレオから

ちょっと待って、ここはイタリアデスヨと思わされるようなド演歌がかかっていた時は、

ますます日本にいるような感覚がして、ホント

ギョッっとさせられてしまった・・・。